“カミサマ”の住む城には、王妃とは別に、一人の女性が住んでいる。
彼女の名は、イエリ。僕たちの妹だ。
僕たちと同様に彼女にも能力がある。
請われるままに、思うがままに、歌う事が出来る。
春の麗らかさに会えば小鳥がさえずるかの如く、
悲しみを訴えられたら慰めのピアノの旋律を、
異国の王をもてなすなら異国の言葉を紡ぎ、
舞踏会では優雅なワルツを奏でる。


しかし、僕たちにもあるように、彼女にも制約がある。
彼女は、歌う以外に言葉を発する事が出来ない。
喜びも、悲しみも、思いも、唇以外でしか語る事が出来ない。

故に彼女は“カミサマ”の金糸雀でしかなく、
尚かつ僕たちを縛り付ける人質でしかない。


僕たちは彼女に会う事は出来ない。
しかし部屋の窓から箱庭を見つめる彼女は、微笑みを浮かべ春風のように歌っている。


28th Aug, 2007
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