ずっと昔、たった一度だけ、箱庭に客人が来た事があります。
彼は自らを「旅人」だと名乗った。
そして箱庭の果物を一つ所望した。
「この庭の植物は、僕の国とよく似ている」 と。

彼は「ここに蛇はいるか」と問うた。
そして否定の返事にゆるく微笑んだ。
「もしかしたら、僕自身が蛇かもしれない」 と。

彼は「機会があればまた来るよ」と言った。
そして箱庭の塀を乗り越えて帰っていった。
「出来れば、再会する時までは生きていてね」 と。

そういえば、塀の外にいる筈の城の人間には遇わなかったのだろうか。


30th Jun, 2009
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