画 家 の 策 略 - 1 -
箱庭の警備を任されて間もない頃の話。
昼間はやる事がない。
せめて箱庭の中を散歩でもできればいいんだけど、あの弟め、怯えきってオレを中に入れようとしない。
何とか入り口付近までは入れるけど、壁周りを守らなきゃ意味ねぇだろ。
それを抜いたって、この庭には興味があるのに。
あの森に似ているのに、知らない植物ばかり……
あの二人は何故こんな箱庭に住んでいる?魔法使い?何のために?
………あー!イライラする!
早く夜になればいいのに!
昼の箱庭は平和過ぎる。蝶さえいないとはどういうことだ。
いいや、寝ちまおう。どうせ何かあったら分かるし。
「……警備を任されてるのに、寝てていいの?」
まどろみを遮ったのは、エイドだった。
「あー…ちょうど良かった。暇なんだよ。」
「…庭の中には入れないからね。」
「チッ。お見通しかよ。」
「その位の抵抗はいいだろう?」
「抵抗?誰に?オレ相手にどうしてだよ?」
「………お茶を持ってきたんだけど、飲む?」
この野郎…相変わらずオレの質問には答えない。
エイドの手の盆には、ポットと、二つのカップと、砂糖壷みたいなものが乗っていた。
「……飲む。」
「甘い物は食べられる?」
「程度によるな。」
エイドは干した果物みたいな物を出した。
思ったより柔らかくて舌触りも良い。けど…
「…味がしねぇじゃねぇか。嫌味か?」
「随分甘党だね。これ砂糖漬けだよ。」
「……」
「まぁ、君の種族は体液が甘いから、甘味には鈍感だっていうけどね。」
「へぇ…初めて聞いたな。そんな事。」
エイドはちょっと目をぱちくりさせて、口をつぐんだ。
本当にこいつ等は何を考えてるのか見当がつかねぇ。
「これは何のお茶なんだ?」
「外から貰ったやつだよ。銘柄は知らない。」
「食事以外にも外から入れられる物ってあるんだ。」
「言えば大抵は貰えるよ。」
「ふーん…」
カップに口を付ける。なんかきつい花の匂いがするな…
半分くらい飲んだ事を確認して、エイドが言った。
「…おいしい?」
「んー、よく分からな……っ?!」
目の前がグラリと揺れた。
気持ち悪い。
体が震える。
胃がひっくり返りそうだ。
「……おま…何、を……」
エイドは冷めた澄まし顔をして、袂からチューブを出した。
黄色いラベルのチューブ。
絵の具だ。
「イーヴィサスは毒に耐性があるから、すぐには逝かないね。」
「………この、やろ……!」
「…さよなら。ケビン。」
言い捨てて、エイドは笑った。
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画家の策略・2へ続きます
20th Aug, 2009