門 番 の 真 実 - 1 -



夏の大雨が降った次の日の朝。



箱庭の内部の警備をするようになって随分経った。
ここはただ散歩するだけでも楽しい。
森のように植物に溢れているし、屋根付きのテラスや池もある。
兄弟のアトリエには入れてもらえないが、特に問題はない。
二人の魔法に興味はあるが、学のないオレにはたぶん理解出来ないだろうから。

朝の警備は、庭を螺旋状に回りながら中央のアトリエまで向かう。
アトリエで二人を確認したら、入り口まで戻って、後は自由だ。



木立を抜けると池に出る。
昨日の雨の所為でいつもより水かさが増していた。
池を見渡すと、端の方に白い物が見えた。
……エイドだ。着物のまま水に浸かっている。
「おい、エイド!水浴びなら湯殿でやれよ。池じゃあ汚れちまうぞ。」
声をかけながら近付くが、全く反応がない。寝てるのか?
しかし、近付くにつれて、妙な違和感を感じた。
エイドの周りだけ水が濁っている。それに、顔が青ざめているように見える。
「エイド?」
完全に奴の背後に立った時、漸く状況が分かった。

水が濁っているのは、血の所為だった。
額から血を流している。着物も赤く滲んでいるから、体の方も怪我しているかもしれない。
周りを見回すと頭上に着物の切れ端が下がっていた。
大方、木に登って足を滑らせて落ちたんだろう。

「おいエイド、聞こえるか!返事しな!」
揺すっても反応無し。頬に触れると水温と同じくらい冷たかった。
呼吸は一応しているから気絶しているだけのようだ。
頭をぶつけたのか、水の中で血を流しすぎたのか。
とにかく水から出して安静にしなくては。

「……ちくしょう…」
オレはエイドを抱き上げ、小走りにアトリエに向かった。




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門番の真実・2へ続きます

20th Aug, 2009

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