門 番 の 真 実 - 2 -



「おいクリエ!救急箱と湯を用意しな!」」
ドアを蹴破って侵入してきたケビンの腕には、血塗れの兄さんが抱えられていた。


「兄さん?!」
「ほら早くしろ!止血して温めるんだよ!」
「っ…わかった…」
急いでキッチンに向かい、お湯の用意をする。
戸棚の上から救急箱を下ろして部屋に戻った。
兄さんは、長椅子に寝かされている。

ずぶ濡れで服に血が滲んでる。顔が青白い。
確かに最近の兄さんは何だか調子が悪そうだった。
でも、どうしてこんなことに…?
「お、来たな。」
ケビンは救急箱を奪い取って、手際よく治療を始めた。
「額の怪我がたぶん一番大きいな。木から落ちて脳震盪でも起こしたんだろ。」
「木…?何でそんな…。」
「知るかよ。果物でも取ろうとしたんじゃねぇの?」
「……」
「よし、終わり。体の方は…」
そういってケビンは兄さんの着物を開いた。
腕や足に切り傷はあるけど、目立った外傷は無さそうだ。
……いや、それよりも気になるもの。


「…痣?」
兄さんの体には、木から落ちた程度では付かないような痣が幾つも残っていた。
咄嗟にケビンを見ると、あからさまに僕から顔を背けた。

…そうか、そういう事か。
「兄さんに触るな!この化け物!」
跪いているケビンの肩を思い切り蹴り飛ばした。
彼はそのまま床に倒れ込んだが、一瞬の間に立ち上がり僕の胸倉を掴んだ。
「てめぇ…兄貴の命の恩人にそういう振る舞いはおかしいんじゃねぇの…?」
「黙れ!どうせお前が怪我させたんだろう?そんなに血が見たい?!」
「あぁ?!“殺さないように”言われてんのにわざわざ怪我させる訳ねぇだろ!」
「目的のためには手段を選ばないイーヴィサスが命令を守るなんて考えられないよ!」
僕はケビンの頬を叩いて、彼の手から逃れた。
大声で喚いた所為で息苦しい。
「ここに来たのだって、どうせ敵討ちでしょう?さっさと殺せよ!!」
「…はぁ?」
「こんないたぶるような殺し方はしてない!あの時と同じように一思いに殺してよ!」
「…おい落ち着けクリエ。話が見えねぇ。」
「もう嫌だよ!こんな…げほっ」
「ほら息があがってんじゃねぇかよ。とにかくオレの話を聞け。」
ケビンは僕の肩を押して長椅子に座らせた。

「まず、オレはお前等を殺す気も殺させる気も無い。お前等が死ぬと契約違反でオレも殺されんだよ。
 で、オレにはわざわざ契約違反するほどの恨みなんか無い。つーかお前等がやってることだって知らないんだ。」
「……え?」
「オレが知らされてるのは、“強力な魔法使いの三兄弟”って事だけ。
 むしろこっちが聞きたいぜ。何でお前等はこんな所に住んでんだよ?妹は城内に住んでんだろ?」
ケビンの問い掛けに、目の前が暗くなった気がした。
彼は何も知らない。
僕達の魔法の事も。
僕達三人と“カミサマ”の契約の事も。
僕達がイーヴィサスを創った事も、壊した事も。
そしてきっと、彼自身、イーヴィサスでありながら生き残っている理由さえも。
…寒気がする。
なんて残酷なんだろう、“あのひと”は…。
何も知らない子供を真実に近づけるなんて。
こんなに汚い僕達に無垢を近づけるなんて。


「…分かったか?」
「……うん、よく分かったよ。君は最低の門番だって事が。」
「お前は兄貴と違って物分かりが悪いな…。」
「もう兄さんには手を出すな。その代わり僕になら何をしても良い。」
「…へぇ…。」
「兄さんの介抱は僕がやる。だから城からお医者様を呼んできて。」
「はいはい。」

ケビンはニタリと笑い、扉の外に出た。
「お前等は、本当に面白い兄弟だな。」
僕が言葉を返す前に扉は閉められた。


兄さん、僕達はまだ 赦されてないみたいだ




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こうして、兄弟にはイエリ以外にも足枷が付けられました。

これで兄弟とケビンの関係説明はだいたい終わりです。
何も知らない純粋な凶器と為す術の無い二人。

20th Aug, 2009

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