お も ち ゃ 箱



日射しの強い夏の日。



オレは四日に一度、兄弟は七日に一度、城に向かう。
“カミサマ”に謁見するためだ。
オレは警備報告のためだが、兄弟が何のために謁見するのかは分からない。
前に一度“カミサマ”に聞いたが、意地悪な大臣に遮られて答えは得られなかった。



謁見の間は声が響く。まるで呟きさえも聞き逃さないように。
だから、王座との距離は大して離れていないのに凄く大声を出している気分になる。
「…それと、南の壁が崩れかけてきてる。早いうちに修復しといてくれ。」
オレの報告を聞きながら大臣が書類にまとめる。
オレは字が書けないし読めないから、報告も連絡も全部口頭だ。
“カミサマ”は大臣がまとめた報告書を覗きながら微笑んだ。
「御前が門番になってから襲撃される頻度が下がったぞ、ケビン。」
「代わりに箱庭の外に鴉が増えましたよ。ケビン、もっと綺麗に切れないのか。」
「一発で切ったら面白く無いじゃねぇか。」
「お前が散らかす所為でこちらの仕事が増えるんだ!全く…化け物め。」
「そりゃどうも、大臣サマ。」
大臣は舌打ちをした。

そりゃこっちの台詞だ。何かにつけてオレを非難しやがって。
他人を貶すことしか出来ない豚のくせに。
そんなにオレが怖いなら鎖にでも繋げばいいだろ。
イーヴィサスを殲滅した時のように。


「ケビン、」
“カミサマ”が口を開いた。
「何?」
「あの兄弟とは仲良くしているか?」
「…何だそりゃ。どういう意味?」
「こら!口を慎め!」
「ふふ、問題ない。…ケビン、御前は二人にどういう風に接している?」
“カミサマ”は口だけで微笑んだ。
「正直に言いなさい。」

……正直に?
もしかして、オレが二人にやってる事がバレてるのか?
でも、契約の範囲は守ってるはずだ。生命に危険が及ぶような事はしていない。

“カミサマ”は続ける。
「御前を責めようとしてるのではない。
 今まで門番を受け入れなかった二人が、御前だけは受け入れている故、どんな事をしたのか気になってな。」

……あぁ、そういう事か。
確かにあの二人はオレを受け入れてる。
いや、力で認めさせたという方が正しいか。

二人の人間を脅すのは簡単だ。
お互いに「片割れを傷付けるぞ」と言えばいいだけ。
その点であの兄弟は面白い。
片割れを傷付けさせないために自分から傷付けられる事を選ぶ。
それも、片割れに知られないように。
結果、オレは恋人に二股をかけるような状態でエイドとクリエに会っている。
面白い。

「…別に、普通に、アイツ等が望むように接してるだけだぜ。アイツ等が嫌がる事はやってないつもりだし。
 二人共いじり甲斐があるし、いいオモチャみたいなもんだ。」

オモチャ。 そうオモチャだ。
エイドはどれだけ殴っても声を出さない。そればかりか未だにオレの命を狙ってるような行動をする。
逆にクリエはすぐに泣き出す。だけど絶対にオレから逃げないで暴力に耐え続ける。
お互いがお互いを庇って、自分が殴られれば片割れは無事だと勘違いしている。
面白い。いつ壊れるか楽しみだし、どこまで壊れないか興味深い。


「……そうか、あまり酷い事はするなよ。」
「まさか、うっかり殺さないように注意深く接してるぜ。」
「それならいい。もう戻って良いぞ。ご苦労だったな、ケビン。」
「どーも。」
“カミサマ”に一礼して(もちろん大臣には挨拶なんてしない)、扉の方に向かう。
重い扉を開けた時、誰かが笑う気配がした。
けど、オレはそのまま、扉を閉めた。



「オモチャ、か…。愚かな子だ。  自分が玩具の一部だという事も知らずに…。」




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ケビンは基本的に人間が大嫌いです。
でも王様には一応拾ってもらった恩を感じてる。

8th Sep, 2009

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