アズテリに初めて会ったのは、「極地演習」の授業だった。
第一回の授業だったから、自己紹介をさせられた。
その時の事が、鮮明に焼き付いている。


Dragon Rhapsody -1-



「……よろしくお願いします!」
まばらな拍手と共に、壇上からアーチャーが降りた。
「次。」
「はい。」
教師の呼び掛けに答え、後ろの方に座っていた茶髪が立ち上がった。
彼は壇上に上がり、黒板に書かれた「Nasha Archer」を消し、「D H Azteri」とだけ書いた。

「フルネームは、ハーテ・アズテリ。“アズテリ”で呼んで欲しい。種族はデーモン。出身は北の森。宜しく。」

流暢に告げると、ペコリとお辞儀をした。
顔を上げて、ぐるりと教室を見回す。
青白いし肩が細い上に姿勢がいいから、ひょろ長く見える。
鋭い青紫の両目は「何か文句あるか」と威嚇しているようだ。

「ファーストネームは何て言うんだい?」
不意に、声がした。
口を開いたのはデーモンコースの奴らしい。ニヤニヤしながら身を乗り出していた。
アズテリはあからさまに眉をひそめた。
「……ドラクトス・ハーテ。」
「綴りは?」
「………」
「書けないのかい?ドーラ。俺が教えてあげようか?」
からかうように奴が言うと、周りに座っていたデーモンコースの奴らもケタケタ笑い出した。

正直、アズテリの名前を今知ったオレは、奴らの言う事がほとんど理解出来ない。
たぶん、アズテリのファーストネームに何かあって、それを笑ってるんだと思うけど。
でも「ドラクトス」って、「ドラゴン」の派生形じゃねーの?
変な名前じゃないと思うけど…。

ぼんやり思っていると、アズテリが思い切り教卓を叩く音がした。
デーモンの奴はビクッとして、威嚇しながら身構えた。
「黙ってろ、レヴィス。」
顔を上げ奴を睨んだアズテリの両目は、憎悪に溢れていた。

教室がシンと静まりかえる中、アズテリは頭を振って改めて穏やかな声を出した。
「……失礼、自己紹介には不必要だと考えていた。」
アズテリは黒板に「Dractus Harte」と書き加えた。
「これで十分か?」
振り返り、尋ねると、一つ拍手が起きた。
それを合図に、ちらほらと拍手が上がる。
アズテリは最初に拍手をした奴とアイコンタクトを取って、黒板の名前を消し、壇上を降りた。

「……次、カーター。」
教師の呼び掛けを合図に、自己紹介が再開した。



オレは、一番始めに拍手をした奴を知りたくて、音のした方向を見た。
そして、根拠はないが、確信した。
拍手をしたのは、例の双子の片割れ(たぶん男の方)だ。






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10th Apr, 2009


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