「認めない」とミア。
「本人がいいなら…」とナターシャ。
「私は構わないわ」とラウラ。
「正直嫌だけど仕方ないわ」とジャクリーネ。
「全然OKでしょ!」とアタシ。
「絶対に嫌!」と再度ミアが吼える。
ギードはとても大きな溜め息を付いた。
“GUY” of Diagram
魔法使いが住むこの村には、『ダイアグラム・ウィッチ』と呼ばれる名家がある。
代々その家の女性が称号と紋章を受け継ぎ、村を支える柱である6人の『魔女』になる。
アタシ、ウィルマはその内のひとつ、五芒星の紋章を持つ魔女。
三芒星を持つナターシャと八芒星のジャクリーネはアタシと同じ学園の同級生。
四芒星のミアは3つ下。七芒星のラウラは10歳上。
今回の問題は先代のお祖母様達まで遡らないといけない。
先代の『魔女』達は、運の悪い事にみんな男の子しか産めなかった。
つまり称号は娘の代を飛び越して孫の代に継承された。
アタシ達が殆ど学生なのはそういうわけだ。
だから、アタシみたいにまだ魔力が成熟してない人間でも、称号を受け継いでいる。
アタシの問題はまだ簡単な方だ(魔力はこれからの修行でなんとかなる)
今回の継承問題――――六芒星のギード――――は、問題の次元が違う。
なにせ、性別からして違うのだから。
「称号の継承条件は第一に“女”である事でしょ!“男”のギードは継承に相応しくない!」
ミアは机をバンと叩いて主張した。村長が片手を上げて諭す。
「…前例が無いわけではない。それに、妹のエリザベッタでは継承には早すぎる。」
「エリザベッタが継ぐまでの繋ぎでしょ?能力もあるなら、別にいいんじゃない。」
「落ちこぼれウィルマは黙ってて!魔力も大してないくせに!」
「何よ!その落ちこぼれに騙されたアンタのお姉さまは能ナシってわけ?」
「私を槍玉に上げないで。卑怯よ。」
「落ち着きなさいミア。今はギードの話をしてるんでしょ。」
ラウラの仲裁により、立ち上がっていたアタシとミアは大人しく席に着いた。
でもミアはまだ納得がいかないようだ。
「…ギードにヘキサグラム家としての能力があるなら、仕方ないけど認めるよ。」
「…やっぱり、そのやり方が一番いいですよね…。」
ギードは力無く呟いて、席を立った。
「判りました。どうしたらいいんですか?」
「お姉さまの呪いを防いだら認める!」
ミアの提案に一番驚いたのはジャクリーネだ。
「ミア!そういう時は自分でやりなさい。」
「だってお姉さま!あたしとギードじゃ相性が悪いもん!」
「私だってそうよ。オクタグラムに勝てるのはナターシャ位だわ。」
「その位はハンデよ!さぁ立ちなさいギード!」
ミアの勝手な提案にジャクリーネは大きな溜め息を付いた。
「はた迷惑な妹分ね。」
「貴方の黒猫よりはましだわ。」
「何…!」
「仕方ないわね。ギード、やる気があるならいらっしゃい。」
ジャクリーネは立ち上がり、靴を鳴らしながら部屋を出た。
ギードも後を続く。
「ちょっとまって、ギード!」
部屋を出る直前、ナターシャが呼び止めた。
「何ですか?」
「あなた、本気なの?“力”のオクタグラム家の彼女と勝負しても、勝つ可能性は…」
「そうよ。怪我だけじゃ済まないわよ?」
ラウラも心配そうに言った。
美女2人に気遣われるとは羨ましい奴め。なんてね。
「大丈夫ですよ。考えはありますから。」
ギードはにっこりと笑った。
「…あ、でも、もしもの時を考えて、絆創膏くらいは用意しておいて下さい。」
そう言うと、軽く会釈をして、ギードは部屋を出た。
「勝負は一発!お姉さまの呪いを防いでごらんなさい!出来るものならね!」
眩しいほどの月明かりの下、ミアが言った。
月が明るすぎる。圧倒的にジャクリーネに有利だ。
「悪いけど手加減はしないわよ。」
「容赦なんてされたら、意味がないですよ。」
「偉そうに…。すぐに這い蹲らせてあげるわ。」
「…先輩こそ、僕が防いだからって因縁付けないで下さいね。」
「フン!落ちこぼれのくせに…落ちこぼれは落ちこぼれらしく突っ伏してればいいのよ!」
「僕を落ちこぼれだと決めつけるのは、僕を這い蹲らせてからにして下さい。…出来るなら。」
「何ですって……私を誰だと思ってるの?“八芒星”オクタグラムのジャクリーネよ!」
そう叫ぶと、彼女は呪文を唱え始めた。
ぐるぐると力が渦巻き、杖の先に風船のように集まっていく。
「ジャクリーネったら大人げないわね。」
ラウラはフゥと溜息を吐いた。
「さーすがお姉さま♪あはっ!ギードなんて一捻りよ!」
ミアは楽しそうに笑った。
「………!」
ナターシャは唇を噛み祈った。
「…さぁ、何をしてくれる…?ギード…。」
アタシはギードの反撃に期待し、思わず震えた。
ギードは、ジャクリーネの力に圧倒されたように顔を歪め、
杖で素早く地面に魔法陣を描き、中心に立った。
魔法陣の細かさから見て、どう考えてもジャクリーネの魔法を防げそうもない。
が、ギードは完璧というかのように、それ以上何もせずただ立っていた。
「ギード…」
ナターシャが心配そうに呟いたと同時に、ジャクリーネの呪いが完成した。
「覚悟なさい!」
ジャクリーネは杖を振って、凝縮した呪いの魔法をギードに放った。
魔法は真っ直ぐギードに当たり、破裂した。
砂煙で何が起こったか判らない。
「ギード、何か、やってた…?」
「…ううん、そのまま受けたように見えた…!」
「あははははは!大口叩いてた割には呆気なかったわね!」
砂煙が段々はれていく。
それにつれて、ミアの高笑いは収まっていき、完全にはれたところで驚きの声に変わった。
「うそっ?!」
「いたた…流石に衝撃までは防げなかったか…」
ギードは、尻餅を付いただけで、無傷だった。
代わりに、ギードの前に浮かんだ青白い人形は、鎖でがちがちに拘束されていた。
「ジャクリーネが発動したのは“緊縛の呪い”…?」
「ギードはそれに身代わりを差し出した…呪いは受けてない!」
「じゃあ…勝負はギードの勝ちね!」
アタシとナターシャは喜びに手を叩いて、ギードの元へ向かった。
「…一重の魔法陣で、防御と身代わりを同時に発動したの…?」
「はい、そうです。どうやら僕もヘキサグラムの能力を持っているようです。」
「…っ!…」
「ギードっ!凄いじゃん!これでアタシ達の仲間入りね!」
「えへ、有難う御座います。」
「1つ、聞いていいかしら?」
はしゃぐアタシの後ろから、ラウラが声を掛けた。
「何ですか?」
「ジャクリーネが発動したのが“緊縛の呪い”じゃなかったら、どうするつもりだったの?」
「…拘束系の呪いが来るだろうな、って予想してました。」
「!…どうしてそんな事が…!?」
「先輩は聡明だから、現状からして僕と妹のどちらがいいかは薄々気付いてると思って。大怪我はさせられないだろうと。」
「………」
「それに、先輩もミアも、僕を見下してたから、縛って転がされるかなぁと思ったんです。」
そう言うと、ギードはジャクリーネにニコリと笑いかけた。
ジャクリーネはそっぽを向いてしまったが。
「……貴方、そこまで考えて…」
ラウラは感嘆に近い声を出した。
「まぐれですよ。」
「あら、運も実力の内よ?」
「さぁ!これでいいでしょ、ミア。ギードを認めるでしょ?」
「……ふん!エリザベッタが継ぐまでの、繋ぎだからね。」
そう言うとジャクリーネ同様、そっぽを向いてしまった。
「おめでとう、ギード=ヘキサグラム。」
「これで『ダイアグラム』が全員揃ったわね!」
アタシとナターシャの言葉に、ギードははにかむように微笑んだ。
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魔女達のキャラ付けもかねてギードの状況説明。
ジャクリーネが前作と比べてずいぶん変わりました。
三流悪役キャラはミアに継承(笑)
12th Jan, 2008