Catch Me If You Can ! - 2 -
「ミゴスってばめちゃ顔色悪ス~!どしたの?大丈ム?」
翌日、訓練場に現れたアイザイアはとても具合が悪そうだった。
顔色が悪いというよりは、熱があるような虚ろな顔付きである。
隊員ほぼ全員に同じことを言われるたびに「平気です」「気のせいです」と返していたが、
とどめとばかりに遅刻してきたメリッサに騒がれ、うろちょろ観察されて、流石にアイザイアも白状した。
「…すみません、今朝からちょっとふらふらして…」
「熱?頭痛ス?風邪?」
「ただの寝不足ですよ。」
「それにしては熱がありそうな顔してるけど…」
ザザルが額を触ろうと伸ばした手をやんわり制して、アイザイアは力なく微笑んだ。
「熱は測ってませんけど、平気です。訓練を始めましょう。」
しかし、歩き出したアイザイアは、バルザックに足を掛けられ呆気なく転んでしまった。
「バルザッス?!」
「バーカ、足元覚束ねーじゃねぇか。そんなんで訓練なんかできねぇだろ。」
「…そんな事、」
「休めっつってんだよ。訓練なんてどうとでもなるよなぁザザル?」
「そうだね。自主トレでもしてるよ。」
「そういう訳だ。大人しく医務室で寝てろ!」
そうだそうだ、と隊員も後押しした。もっとも何人かは訓練をサボりたくて言ってるようだが。
バルザックは未だ立ちあがれないでいるアイザイアを担ぎあげた。
「オレはこいつを医務室にぶち込んでくるから、適当に訓練始めててくれ。」
「わかった。バルザック、『気をつける』んだよ。」
「はぁ?」
バルザックはザザルの意味深な言葉を聞き返そうとしたが、長くなりそうなので止めた。
アイザイアは大人しくバルザックに抱えられていた。
生粋のアクション使いのバルザックに抵抗しても無駄と思っているのか、それとも本当に抵抗するだけの元気が無いのかは分からないが、バルザックには好都合だった。
医務室の前を通り過ぎ、奥にある仮眠室の扉を開けた。
中には誰もいない。
バルザックは扉に鍵をかけると、適当なベッドにアイザイアを放り出した。
その途端、アイザイアは抵抗を始めた。
「オクスク少佐、退いて下さい。ここは医務室ではないでしょう。」
「仮病じゃ医務室は使えねぇだろ。」
「退きなさい。」
「顔が赤いぜ少佐ぁ。熱出てきたんじゃねぇか。」
「触るな!」
振り上げられたアイザイアの腕を掴み、バルザックは彼をベッドに組み敷いた。
そのままアイザイアの上着を力任せに開く。
ぶちぶちとボタンが千切れる音がしたが、気にしない。
露わになった褐色の肌には、鬱血の跡が散っていた。
「…っ…離せ!」
「こんな事だろうと思ったぜ。どうせ昨日の夜も大佐の所行ってたんだろ?」
「煩い!このっ…」
「あんなひでぇ顔で訓練出てくるのもどうかと思うぜ。」
「だから貴方には関係ないと…」
「お前、体じゃなくて口で交渉してるっつったけど、この口でどんな交渉してるんだ?」
つう、とアイザイアの唇を撫でる。
アイザイアは目を逸らして赤くなった。
正直な奴だ。バルザックは不愉快な気分になった。
「そんな事までして、どんな無理難題を交渉しようとしてんだよ。」
「…バルザックだって知ってるでしょう。本部の人間が攻略作戦に消極的なことを。僕が体を賭ける事で攻略作戦が円滑に進む。利害が一致したまでです。」
「それじゃあお前は、自分の地位のために体を売ってるってわけか?とんだ淫売だな。」
あからさまな言い方に、アイザイアはかっと赤くなった。
「違います!」
「違わねぇだろ。そんなやり方、部隊のためになるとでも思ってんのか?」
「現に結果は出ているでしょう。あと少しなんです。邪魔しないで下さい。」
「オレは嫌だね。部隊長があんな変態親父に抱かれてるなんて虫唾が走る。」
「貴方の意見なんて聞いていません!」
「じゃあオレもお前の意見なんて聞かねぇ。」
バルザックはアイザイアの両手を纏めて拘束し、彼の首筋を舐め上げた。
アイザイアは息を詰めて体を強張らせる。
「……それが望みですか。」
「あ?」
「よく分かりました。取引しましょう。今ここで僕を抱いていいので今後は邪魔をしないで下さい。」
アイザイアの目は本気だった。逃げるための嘘を言ってるわけでも、バルザックに恐怖しているわけでもない。
「そうやってあの変態親父を誘ったのか?」
「っ…貴方も、同類でしょう。」
アイザイアは薄ら笑いを浮かべた。
「心配してる風を装って、僕を犯したいだけでしょう?この変態。」
短気なバルザックを挑発するような言い方だったが、意外にもバルザックはすんなりと肯定した。
「そうだな。単純にお前をオレの手でめちゃくちゃにしてやりたいだけかもしれねぇ。」
「え……」
「だからお前の取引には乗らねぇよ。」
困惑した顔で何か言い返そうとしたアイザイアの口を、バルザックは自分の口で塞いだ。
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